UXの内製化が進んでいます。
これはとても健全な流れだと思っています。UXが特別な専門職のものではなく、企業の中に根づいていくこと自体は、長い目で見れば素晴らしいことです。
一方で、
「では、外部のUXデザイン専門会社は、今後何のために存在するのか?」
という問いが立ち上がります。
私はかつて、UXデザインを主軸にする組織を率いる立場にありました。
スキルやプロセスの話ではなく、組織としてどう振る舞うのか、どこに優先度を置くのかを日々考え続ける立場です。
その経験を通じて感じたのは、UX組織が機能するかどうかを分けるのは、さらにいえば外部から支援する立場のUX専門会社の存在意義は、経験値や方法論よりも優先度の置き方、つまり「態度」なのではないか、ということでした。
内製UXチームが必然的に背負うもの
企業の中にUXチームがある場合、そこにはすでに多くの前提条件があります。
動かせない会社としての大きな方針。
過去から積み重なってきた経緯。
事業上の事情や人間関係。
それらは、その組織が生きてきた結果であり、簡単に否定できるものではありません。
内製UXチームは、その前提条件を引き受けながら仕事をする存在です。
それは避けられるものではなく、組織の現実と向き合いながらUXに取り組むという意味で、とても重要な役割です。
ただし、そこにはどうしても一つの傾向が生まれます。
「まずは組織内部の約束事が優先される」という傾向です。
では、外部のUX専門会社は何をするのか
では、外部のUXデザイン専門会社は何をする存在なのか。
もし、クライアント企業と同じ前提条件を共有し、同じ空気を読み、同じ事情を優先し、同じ妥協をするのであれば、そこに外部の会社を雇う意味はありません。
極端に言えば、同じことをやるなら、内製で十分です。
それでも外部を呼ぶ価値があるとすれば、それは「空気を読まない態度」を保てるかどうかに尽きるのではないか、と私は思っています。
- 結局この体験は、使う側から見て価値があるのか
- どんな事情があろうと、いま起きている問題は何なのか
- それは、生活者にどんな不便や違和感を与えているのか
こうした問いを、聞き分けよく飲み込まずに投げ続ける。
この優先度の偏りこそが、外部のUX専門会社の存在理由だと考えてきました。
「空気を読まない態度」を組織として保つ難しさ
ただ、この態度を保つのは簡単ではありません。
クライアント企業と長く仕事をすればするほど、事情が分かり、努力が見え、判断の背景も理解できるようになります。特に、経験があり、真面目で、責任感の強い人ほど、無意識のうちに同化していきます。
だからこそ、組織として意図的な設計が必要でした。
私たちは、「気に入ってもらって仕事をもらう会社」ではなく、「エクスペリエンスの品質で愛される会社」であることを選びました。
多少エキセントリックでも、大目に見る。完璧主義であること、徹底して仕事をやりきる人を尊敬の対象にしました。
扱いにくい部分があっても、「優秀」で止まるのではなく、「秀逸」と呼べる水準に至れば、結果として信頼される。そう信じて、評価の軸を置いていました。
もちろん、その反面として、営業段階での不足があったり、多少使いにくいと言われる部分が残ったのも事実です。それでも、どこに軸足を置くかは、意図的に選び続けました。
どこにエネルギーを割くか、という態度
社内でどんな議論がなされるべきか。
上司の関心事が空気を決めるものだとおもいますが、はっきりと意識していたのは
クライアント企業の中で「誰が何を言ったか」「どの部署がどう反応したか」にエネルギーを割くよりも、調査で生活者が何に戸惑い、何に引っかかり、どんな反応を示していたのかにエネルギーが割かれている状態のほうが、健全だという考えです。
これはスキルの話ではありません。
プロセスの話でもありません。
どこに関心と時間を割くのかという、態度の話です。
方法論を使いこなすこと以上に、この態度を、組織として保ち続けることが存在意義だととらえていましたし、今もそう考えています。
内製化が進む今だからこそ、外部のUX専門会社が、何を捨て、何を優先する存在なのか。
その問いを、これからも考え続けていきたいと思います。
【連載】
イントロダクション:UXデザインは、「態度」の仕事
#1:内製化が進む時代に考える:UXを専門にする会社のスタンス
#2:UX組織において、経営が設計すべき「働く人のエクスペリエンス」
#3:UXの仕事では、「更新し続ける態度」が評価される


