前回、「やわらかい設計」という考え方を提示しました。(過去投稿)
行動を定義し、それに従わせることで状態を維持するのではなく、関与の中で調整が立ち上がる状態をつくること。
これが「やわらかい設計」と呼びうるものです。
砂場では、遊び方が固定されていません。「ごっこ遊び」から「山の高さを競う」という別の行動を呼び、「山から流す水の流れのランダムさ」へと遊びが連なっていきます。
標識のない交差点では、ドライバーが周囲の状況を読み取りながら、自ら判断し、調整を行います。
どちらも、関係の中で行動が立ち上がり、その結果として秩序が保たれています。
ここで一度、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。
この「やわらかい設計」はどう作っていけるのでしょうか。
おそらく、「やわらかい設計」の作り方は、これまでの作り方とは少し違うものになるのではないかと思っています。
砂場や、標識ない交差点のような例を見ていると、どうも関わり方は直線的ではない。
かといって、ランダムなものというわけでもない。
一定のリズム、ループ構造があるように見えるのです。
まず、自分と対象となるもの(砂場でもいいですし、仕事の文脈ならプロジェクトでもいいでしょう)の間に「重なり合い」が生まれます。
何も関係のないところから、突然関与が生まれるわけではありません。
交差点では、空間が重なり合うことで、関わらざるを得ない状況が生まれます。
砂場では、「ここに入っていい」と感じたときに、はじめて関わりが始まります。
その関与の入り口があって、実行動があって、環境に働きかけた結果を自分が受け取り、関わり方がさらに変わっていく。
それは一度きりで終わることもあれば、少しずつ変化しながらループのように紡がれていくこともある。
ただ、この関わりには終わりがある。
交差点から抜け出た瞬間、砂場遊びから次の遊びに移った瞬間、プロジェクトが終わり次に移る瞬間にそのループは終わる。
ここでひとつ、モデルを提示したいと思います。
人が関わることで完成する仕組みはどう機能しているのか。
わたしは、これをある循環として捉えることができるのではないかと考えています。
関わりは、いきなり始まるわけではありません。
まず、自分と対象とのあいだに重なりが生まれる。
そこから、関与が立ち上がり、行動が生まれ、結果が返ってくる。
そしてその変化が、次の重なり合い方を生む。
図としてシンプル化すると、以下になります。

Overlap(重なりに気づく)
→ Engage(関与が始まる)
→ Act(行動する)
→ Feedback(結果が返る)
そして、その結果が違う形の重なりを生み出し、次のEngageへとつながっていく。
循環が単に繰り返されるわけではなく、関与のたびに状況は更新され、他者の関与が重なり、次の関わり方そのものが変化していく。
関与は反復ではなく、更新されながら連なるイメージを持っています。
この循環のポイントは、状態は外から制御されるのではなく、内側から維持されることにあります。
だからこそ、いくつかの条件が必要になります。
まず、関与したくなる理由があること。
変化の余地が感じられ、自分が関われそうだと感じられること。
そしてそれが、自分の中にある方向とどこかで重なっていること。
遊びのような内発的な動機であれ、交差点のような緊張を伴う状況であれ、関与しないではいられない状態があること。
次に、実際に関与できること。
行動の入口が開かれており、やり方が固定されていないこと。自分のやり方で工夫ができること。
そして、関与の結果が返ってくること。
変化が知覚でき、自分の影響が感じられ、その意味が理解できることです。
これらが揃うと、関与は単発ではなく、連なりとして持続します。
この体験の連なりは、関わる人間が変化し続ける限り、自然と動き続ける仕組みでもあります。
これまで、UXデザイナは、改善対象を定め、より良くなったジャーニーを描くという仕事を延々とやってきました。それは体験品質が上がりきらないとき、到達すべき基準の描写だったように思います。
もちろんそれに大きな意義がありますが、「変化し続ける前提」と対峙するには少し固い仕上がりになる検討ツールであるとも思います。
まだまだ仮説の域を出ませんが、変化にさらされる仕組みを考えるシーンで、「いかに関与の循環を回すのか」という問いかけが有効なこともあるのではないか。その時、この仮称「OEAFループ(Overlap – Engage – Act – Feedback)」は足掛かりの一つになりえるのではないか。
現時点ではあくまで思考実験ですが、そんな可能性を考えています。


